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Lectures and Seminars

講義と演習


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□2016年度(平成28年度)

岡山大学 文学部/大学院社会文化科学研究科

美学1「図表の美学」(大学院・前期月曜2限)
美術史家にして哲学者ジョルジュ・ディディ=ユベルマン(Georges Didi-Huberman, 1953- )の著書『アトラス、あるいは不安な悦ばしき知』(2011)の読解と検討をおこないます。美術史家アビ・ヴァールブルク(Aby Warburg, 1866-1929)は,晩年の未完の図像集『ムネモシュネ・アトラス』で,西洋の古代から現代にいたるおよそ1000点の図像をいくつもの黒地パネル上に配置し,図表のようにして,西洋文明の姿を可視化しようとしました。その構想を自在に敷衍し,古代バビロニアの肝臓占いから現代のマルセル・ブロータースやゲルハルト・リヒターの美術作品までを辿ったディディ=ユベルマンとともに,取りあげられた作品の数々を実際に分析しなおしながら,図表によって可視化される芸術と歴史の錯綜した関係を再考します。あわせて,関連する美術史家や哲学者の研究文献も検討します(受講者にあわせて日本語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・英語文献を使用します)。

初回(場合によっては数回ほど)は概説として,ヴァールブルク『ムネモシュネ・アトラス』構想の概要を確認します。そのあとは毎回文献を講読し,重要作品を分析しながら,議論をおこないます。受講者には適宜,文献読解および作品分析の報告,外国語文献の翻訳,議論への参加などを求めます。ディディ=ユベルマン『アトラス、あるいは不安な悦ばしき知』については日本語訳をもちいますので,下記の「テキスト等」の欄に掲載の書籍を各自で入手してください。

教科書:ジョルジュ・ディディ=ユベルマン『アトラス、あるいは不安な悦ばしき知』伊藤博明訳,平凡社,2015年(6000円+税,ISBN: 978-4-7566-1541-1)

* 参照したテクスト:
・Georges Didi-Huberman, "Atlas : comment remonter le monde" (entretien avec Catherine Millet), Artpress, n. 373, 2010.
・「ジョルジュ・ディディ=ユベルマンに聞く」(橋本一径によるインタヴュー)、『フォトグラファーズ・ギャラリー・プレス』第10号、2011年
・橋本一径「《アトラス》――いかにして世界を背負うか」、『フォトグラファーズ・ギャラリー・プレス』第10号、2011年
・アビ・ヴァールブルク『ムネモシュネ・アトラス』(ヴァールブルク著作集別巻1)、ありな書房、2012年(パネルB, 1, 2, 46, 47)
・ヴァルター・ベンヤミン「模倣の能力について」山口裕之訳、『ベンヤミン・アンソロジー』所収、河出文庫、2011年
・田中純「イメージの系統樹――アビ・ヴァールブルクのイコノロジー」、中尾央・三中信宏編『文化系統学への招待――文化の進化パターンを探る』所収、勁草書房、2012年
・岡田温司、田中純「対談:新たなるイメージ研究へ」、『表象』第10号、表象文化論学会、2016年


実践演習(芸術学)/芸術学演習「ルネサンスにおける言葉とイメージ」(学部・第2学期月曜7・8限および水曜3・4限)
ルネサンスの芸術と思想を,言葉とイメージ,言語と図像,作品と理論との相互影響から検討します。ルネサンスのイタリアでは,多彩な芸術作品が生まれるとともに,それが理論言説によって考察されるようになります。後世の美学と美術史の成立の基礎になったその作品と理論の絡み合いを,「万能人」レオン・バッティスタ・アルベルティを中心に,フランチェスコ・ペトラルカからジョルジョ・ヴァザーリまで,おもにマイケル・バクサンドールの研究『ジョットと雄弁家』(Giotto and the Orators, 1971)や『絵画のための言葉』(Words for Pictures, 2003)を参照しながら,考察していきます。

はじめの数回の授業は,イタリア・ルネサンスの芸術と思想に関する基礎知識を確認します。そのあとは,受講者が各自に割り当てられた文献読解・作品分析の結果を報告し,考察と議論をおこなうとともに,アルベルティ『絵画論』をはじめ重要文献の読解もおこないます(受講者にあわせて日本語・英語・ラテン語・イタリア語・フランス語・ドイツ語文献を取りあげます)。受講者には適宜,担当分の作品分析と文献読解の報告,外国語文献の翻訳,毎回の議論への参加などを求めます。

教科書:レオン・バッティスタ・アルベルティ『絵画論』(改訂新版),中央公論美術出版,2011年(2500円+税,ISBN: 978-4-8055-0675-2)

* 参照したテクスト:
・ジョルジョ・ヴァザーリ『ルネサンス画人伝』平川ほか訳、白水社、1982年(「マンテーニャ」「フラ・アンジェリコ」「ティツィアーノ」「ボッティチェッリ」)
・岡本源太「ルネサンスの芸術論と時間の問題――アルベルティからジョルダーノ・ブルーノまで」、『美学』第64巻第1号(通巻242号)、2013年、15〜25頁
・浦上雅司「修辞学の伝統とアルベルティの『絵画論』――historiaの概念を中心に」、『福岡大学人文論集』第32巻第1号(通巻124号)、2000年、1〜26頁
・西村清和「物語る絵のナラトロジー」、『美学芸術学研究』第23号、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部美学芸術学研究室、2005年、1-28頁
・喜多村明里「マンテーニャの《美徳の庭から悪徳を追放するミネルウァ》――メタモルフォシスと自然の不定形性」、金山弘昌編『変身の形態学――マンテーニャからプッサンへ』(イメージの探検学第5巻)、ありな書房、2014年、7〜82, 291〜300頁
・喜多村明里「フラ・アンジェリコ作聖マルコ修道院ドルミトリオのフレスコ装飾――信仰と絵画表現をめぐる一考察」、『美学』第47巻第1号、1996年、37〜48頁
・喜多村明里「フラ・アンジェリコとサン・マルコ修道院――信仰と祈祷瞑想における画像の効用」、関根秀一編『イタリア・ルネサンス美術論――プロト・ルネサンス美術からバロック美術へ』、東京堂出版、2000年、71〜86頁
・ヴィクトル・I・ストイキツァ「絵画をいかに味わうか」、『絵画をいかに味わうか』岡田温司監訳、平凡社、2010年、71〜105, 300〜306頁
・エルンスト・ハンス・ゴンブリッチ「ボッティチェッリの神話画――画家のサークルの新プラトン主義的象徴表現」、『シンボリック・イメージ』大原まゆみほか訳、平凡社、1991年、76〜167, 388〜415頁


現代芸術と哲学(教養・第1学期火曜3・4限)
この授業では,20世紀以降の芸術文化と哲学思想の交流に眼を向けつつ,今日における「芸術」の多様な在り方を歴史的に概観します。現代の芸術家たちは,「芸術とはなにか」という根本的な問いに向き合うなかでしばしば哲学者たちと対話を繰り広げ,たんに個々の作品を制作するだけでなく,ひとつの運動として活動を展開してきました。とりわけ影響力のあった芸術運動を取りあげて,その絵画・彫刻・音楽・舞台・映画・写真・文芸等の作品を検討しながら,講義を進めていきます。

1 芸術の近代と現代――印象主義からキュビスムへ
2・3 表現主義
4・5 未来主義
6・7 シュルレアリスム
8・9 抽象表現主義/アンフォルメル
10・11 ネオダダ/ポップ・アート
12・13 コンセプチュアル・アート
14・15 ランド・アート/環境芸術

教科書:末永照和監修『カラー版・20世紀の美術』(増補新装版),美術出版社,2013年(2500円+税,ISBN: 9784568400854)

「現代芸術と哲学」読書案内[PDF]


人文学の論点「ルネサンス――美学の前史」(学部・第1学期火曜6限)
ルネサンス――イタリアを中心にヨーロッパで多彩な芸術が新しく花開いたこの時期,思想もまた人文主義の名のもとに,人間と世界,言葉と科学,社会と歴史,政治と文化についての新たな鋭い洞察をもたらしました。しかもルネサンスの「万能人」たちが象徴するように,このとき思想と芸術は分かちがたく結びついていました。本講義では,とくに絵画を導きの糸に哲学者たちの言葉を読み,絵画作品の数々を映像で確認しながら,近代を切り拓いたルネサンスを美学の前史として理解します。

1 哲学者としての画家――レオナルド・ダ・ヴィンチ
2 哲学者にして画家――レオン・バッティスタ・アルベルティ
3 神のごとき画家――マルシリオ・フィチーノ
4 科学の画家――ガリレオ・ガリレイ
5 政治の風景画――ニッコロ・マキアヴェッリ
6 自己の装飾画――ミシェル・ド・モンテーニュ
7 宇宙の肖像画――ジョルダーノ・ブルーノ
8 絵画は考える――ルネサンス以後

教科書:ブルクハルト『イタリア・ルネサンスの文化』(上下巻)柴田治三郎訳,中公文庫,1974年(上巻:781円+税,ISBN: 978-4-12-200101-5/下巻:800円+税,ISBN: 978-4-12-200110-7)


美学演習1「線の美学」(大学院・後期月曜2限)
美術史家にして哲学者ユベール・ダミッシュ(Hubert Damisch, 1928- )の『線についての論考』(Traité du trait, 1995)の読解と検討をおこないます。ルネサンスにおけるレオン・バッティスタ・アルベルティの「リネアメントゥム」やジョルジョ・ヴァザーリの「ディセーニョ」から,現代のジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリの「トレ」にティム・インゴルドの「ラインズ」まで,線は,芸術制作の基本的要素としてだけでなく,認識と行為の一般的基盤にして,人間と世界の関係そのものとして理論化されてきました。そうした「線」の理論を,ダミッシュとともに美術史と思想史を往還しながら辿ります。あわせて,関連する美術史家や哲学者や人類学者の研究文献も検討します(受講者にあわせてフランス語・英語・ドイツ語・イタリア語・ラテン語・日本語文献を使用します)。

初回(場合によっては数回ほど)は概説として,線をめぐる芸術理論の基礎知識を確認します。そのあとは毎回文献を講読し,重要作品を分析しながら,議論をおこないます。ダミッシュ『線についての論考』はフランス語原書を用います。受講者には適宜,文献読解および作品分析の報告,外国語文献の翻訳,議論への参加などを求めます。

* 講読したテクスト:
・Hubert Damisch, Traité du trait. Tractatus Tractus, Paris, Éditions de la Reunion des Musées Nationaux, 1995.

* 参照したテクスト:
・谷川渥『美のバロキスム』、武蔵野美術大学出版局、2006年
・谷藤史彦『ルチオ・フォンタナとイタリア20世紀美術』中央公論美術出版、2016年
・ティム・インゴルド『ラインズ――線の文化史』工藤晋訳、左右社、2014年
・エミール・ルーダー『本質的なもの』雨宮郁江、室賀清徳訳、誠文堂新光社、2013年


実践演習(美学)/美学演習「シュルレアリスムと野生の美学」(学部・第4学期月曜7・8限および水曜3・4限)
詩人アンドレ・ブルトンが主導した20世紀最長の芸術運動シュルレアリスム(超現実主義)の作品と思想を検討します。とりわけ,シュルレアリスムにおける「自然」概念に焦点を当て,そこに見られる人間と世界の関係についての特異な洞察に着目します。ポール・ヴァレリーからロジェ・カイヨワにいたる周囲の芸術家・思想家たちの芸術理論にも照らし合わせながら,考察していきます。

はじめの数回の授業は,シュルレアリスムの芸術と思想に関する基礎知識を確認します。そのあとは,受講者が各自に割り当てられた作品の分析結果を報告し,考察と議論をおこなうとともに,「シュルレアリスム宣言」をはじめ重要文献の読解もおこないます(受講者にあわせて日本語・フランス語・英語・ドイツ語・イタリア語文献を取りあげます)。受講者には適宜,担当分の作品分析と文献読解の報告,外国語文献の翻訳,毎回の議論への参加などを求めます。

教科書:アンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』巖谷國士訳,岩波文庫,1992年(720円+税,ISBN: 978-4-00-325901-6)

* 参照したテクスト:
・André Breton, Manifeste du surréalisme [1924], in OEuvres complètes, I, Paris, Gallimard, 1988, pp. 309-346.
・アンドレ・ブルトン『シュルレアリスムと絵画』瀧口修造・巖谷國士監修、人文書院、1997年
・巖谷國士『〈遊ぶ〉シュルレアリスム』、平凡社、2013年
・朝吹亮二『アンドレ・ブルトンの詩的世界』、慶應義塾大学法学研究会、2015年



新潟大学 文学部

美学「ルネサンス――美学の前史」(集中)
本講義では、「絵画」の比喩を導きの糸にルネサンスの哲学者たちの言葉を読み、またその言葉を実際のルネサンスの絵画作品の数々に照らしあわせることで、近代文明を切り拓いたルネサンスの思想と芸術の交差を美学の前史として理解します。

ルネサンスのヨーロッパ――イタリアを中心に、多彩な新しい芸術が生まれたこの時期、人文主義の名のもとに展開された思想もまた、人間と世界、言葉と科学、社会と歴史、政治と文化に新たな鋭い洞察をもたらしました。しかも、ルネサンスの「万能人」たちが象徴するように、このとき思想と芸術は分かちがたく結びついていました。

本講義では、芸術のなかでもとくに絵画に焦点を当て、絵画が新しい哲学のモデルになったことを多角的に考察していきます。まず、絵画を「精神的なもの」と捉えたレオナルド・ダ・ヴィンチを通して、ルネサンスの哲学と絵画の関係を確認します。そのうえで、「画家」の形象に着目しながら、人間なるものの理解がいかに刷新されたのかを、アルベルティ、フィチーノ、ガリレイらとともに辿ります。ついで、「絵画」の譬喩に着目しながら、新しく政治・社会・宇宙にもたらされた洞察がいかなるものかを、マキアヴェッリ、モンテーニュ、ブルーノらのうちに探ります。最後に、デカルトからヴィーコへといたるルネサンス以後の近代哲学の展開について、絵画に照らして展望します。

以上を通して、言語以前の感覚・形象・比喩を駆使した思考法が、ルネサンスにあって新しい地平を切り開いていったことを、美学の前史として特徴付けます。

*参考文献:
【ルネサンスに関して】
・ダニエル・アラス『モナリザの秘密』(白水社、2007年)
・エレーヌ・ヴェドリーヌ『ルネサンスの哲学』(白水社文庫クセジュ、1972年)
・エルンスト・ハンス・ゴンブリッチ『シンボリック・イメージ』(平凡社、1991年)
・アンドレ・シャステル『ルネサンスの神話』『ルネサンスの危機』(ともに平凡社、1999-2000年)
・エドガー・ウィント『ルネサンスの異教秘儀』(晶文社、1986年)
【美学史に関して】
・当津武彦編『美の変貌――西洋美学史への展望』(世界思想社、1988年)
・ウンベルト・エーコ『美の歴史』『醜の歴史』(ともに東洋書林、2005-2009年)