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Lectures and Seminars

講義と演習


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岡山大学 文学部/大学院社会文化科学研究科

美学2「社会的記憶の美学」(大学院・前期月曜2限)
美術史家アビ・ヴァールブルク(Aby Warburg, 1866-1929)が最晩年に取り組んだ,ルネサンスの哲学者ジョルダーノ・ブルーノ(Giordano Bruno, 1548-1600)に関する未完の研究を再構成し,ルネサンスから現代をつなぐ想像力論の系譜として考察をおこないます。それとともに,「社会的記憶」としてのイメージという観点から,ルネサンスの影響作用を検討します。

はじめの数回ほどは,ヴァールブルクのブルーノ研究構想の概要を確認します。そのあとはヴァールブルク晩年の研究草稿・講演原稿・書簡等を中心に関連文献を講読し,重要作品を分析しながら,議論をおこないます。受講者には適宜,文献読解および作品分析の報告,外国語文献の翻訳,議論への参加などを求めます。

ヴァールブルク晩年の草稿類は,日本語訳が『怪物から天球へ』にまとめられていますので,それを使用します。下記の「教科書」の欄に掲載の書籍を各自で入手してください。また,受講者にあわせて,日本語・ドイツ語・イタリア語・フランス語・英語・ラテン語の関連文献を使用することがあります。

教科書:アビ・ヴァールブルク『怪物から天球へ』伊藤博明・加藤哲弘訳,ありな書房,2014年(4500円+税,ISBN: 978-4-7566-1435-3)



実践演習(美学)/美学演習「アビ・ヴァールブルク『ムネモシュネ・アトラス』読解」(学部・第1学期月曜7・8限および水曜3・4限)
美術史家アビ・ヴァールブルクが晩年に取り組んだ未完の図像集『ムネモシュネ・アトラス』の読解と検討をおこないます。『ムネモシュネ・アトラス』は,西洋の古代から現代にいたるおよそ1000点の図像を,複数の黒地パネル(現存する最終版の記録写真では63枚)のうえに縦横に配置して,西洋文化の歴史を可視化しようとしたものです。日本語版を手引きに,重要なパネルを一つ一つ検討していきます。

はじめの数回の授業は,ヴァールブルクとその『ムネモシュネ・アトラス』に関する概説をおこない,基礎知識を確認します。そのあとは毎回,受講者が各自に割り当てられたパネルの分析結果を報告し,考察と議論をおこないます。あわせて重要な研究文献の読解もおこないます(日本語文献を主としますが,受講者にあわせてドイツ語・英語・フランス語・イタリア語文献を取りあげる場合もあります)。受講者には適宜,担当分のパネル分析と文献読解の報告,外国語文献の翻訳,毎回の議論への参加などを求めます。

教科書:ヴァールブルク『蛇儀礼』三島憲一訳,岩波文庫,2008年(560円+税,ISBN:978-4- 00-335721-7)


現代芸術と哲学(教養・第1学期火曜3・4限)
この授業では,20世紀以降の芸術文化と哲学思想の交流に眼を向けつつ,今日における「芸術」の多様な在り方を歴史的に概観します。現代の芸術家たちは,「芸術とはなにか」という根本的な問いに向き合うなかでしばしば哲学者たちと対話を繰り広げ,たんに個々の作品を制作するだけでなく,ひとつの運動として活動を展開してきました。とりわけ影響力のあった芸術運動を取りあげて,その絵画・彫刻・音楽・舞台・映画・写真・文芸等の作品を検討しながら,講義を進めていきます。

1 芸術の近代と現代
2 表現主義
3 キュビスム
4 未来主義
5 小括
6 構成主義/絶対主義
7 ダダ
8 シュルレアリスム
9 小括
10 抽象表現主義/アンフォルメル
11 ネオダダ/ポップ・アート
12 ミニマル・アート
13 コンセプチュアル・アート
14 ランド・アート/環境芸術
15 総括


「現代芸術と哲学」読書案内[PDF]


人文学の論点「ルネサンス――美学の前史」(学部・第1学期火曜6限)
ルネサンス――イタリアを中心にヨーロッパで多彩な芸術が新しく花開いたこの時期,思想もまた人文主義の名のもとに,人間と世界,言葉と科学,社会と歴史,政治と文化についての新たな鋭い洞察をもたらしました。しかもルネサンスの「万能人」たちが象徴するように,このとき思想と芸術は分かちがたく結びついていました。本講義では,とくに絵画を導きの糸に哲学者たちの言葉を読み,絵画作品の数々を映像で確認しながら,近代を切り拓いたルネサンスを美学の前史として理解します。

1 レオナルド・ダ・ヴィンチ
2 レオン・バッティスタ・アルベルティ
3 ガリレオ・ガリレイ
4 ニッコロ・マキアヴェッリ
5 ミシェル・ド・モンテーニュ
6 マルシリオ・フィチーノ
7 ジョルダーノ・ブルーノ
8 美学とはなにか

教科書:ブルクハルト『イタリア・ルネサンスの文化』(上下巻)柴田治三郎訳,中公文庫,1974年(上巻:781円+税,ISBN: 978-4-12-200101-5/下巻:800円+税,ISBN: 978-4-12-200110-7)


人文学概説(美学1)「美学の歴史と理論」(学部・第2学期月曜7・8限および水曜3・4限)/人文学インタラクティブ講義(学部・第2学期月曜1・2限)
人類誕生以来,数知れないほどの芸術が生みだされてきましたが,それと同じくらい古くから人間はその芸術について考え,語りあい,書きしるしてきました。本講義では,古代から近代にいたる西洋の思想を概観しながら,「芸術」なるものをめぐるさまざまな考え方を歴史的に見ていきます。歴史的に重要なテクストを読み,西洋美術の展開も確認しつつ,講義を進めていきます。

1 感性――美学/芸術
2 真理――プラトン/プロティノス
3 浄化――アリストテレス
4 感情――キケロ/偽ロンギノス
5 記憶――『旧約聖書』/ダマスコスのヨアンネス
6 解釈――オリゲネス/ボナヴェントゥーラ
7 制作――サン・ヴィクトルのフーゴー/トマス・アクィナス
8 小括
9 装飾――アルベルティ
10 創造――フィチーノ
11 多様――ブルーノ
12 趣味――グラシアン/ヒューム
13 譬喩――ヴィーコ
14 遊戯――シラー
15 総括

教科書:エルンスト・H・ゴンブリッチ『美術の物語』(ポケット版),ファイドン,2011年 (2,100円+税,ISBN:978-4864410069)


美学演習2「理論的対象の美学」(大学院・後期月曜2限)
哲学者ルイ・マラン(Louis Marin, 1931-1992)の『絵画の不透明性』(Opacité de la peinture, 1989)の読解と検討をおこないます。マランによれば,ルネサンス絵画は近代の表象と記号の理論の基礎を提示しましたが,そこには過去の作品と現代の理論のアナクロニックな関係を理解する糸口があります。「理論的対象」の概念に集約される,過去と現在,作品と理論,の複雑な関係を,『絵画の不透明性』の読解およびルネサンス絵画の分析を通して考察します。あわせて,関連する哲学者・美学者・美術史家の研究文献も検討します(フランス語を中心に,受講者にあわせて英語・イタリア語・ドイツ語・日本語文献を使用します)。

初回(場合によっては数回ほど)は概説として,ルネサンス絵画と表象・記号の理論をめぐる基礎知識を確認します。そのあとは毎回文献を講読し,重要作品を分析しながら,議論をおこないます。マラン『絵画の不透明性』はフランス語原書を用います。受講者には適宜,文献読解および作品分析の報告,外国語文献の翻訳,議論への参加などを求めます。


人文学講義(美学)/美学講義「ユートピアの地図作成」(学部・第4学期月曜7・8限および水曜3・4限)
ルネサンスに登場した「ユートピア」表象を,哲学文献と芸術作品の考察を通じて検討します。ルネサンスのヨーロッパでは,トマス・モア『ユートピア』を嚆矢として,理想の社会に関する多様な議論が「別世界」のイメージをとって展開されました。陰に陽に現実世界を映し出すそのイメージを,ルネサンスの哲学文献と芸術作品の交差に注目しながら,考察していきます。

トマス・モア『ユートピア』を中心にルネサンス期の重要文献の読解をおこいない,あわせて関連するルネサンス期の絵画や建築を分析します。島と海,航海と発見,旅行記,怪物と善き野蛮人,地図,演劇と対話篇,都市設計,ヨーロッパとアメリカ,虚構と現実,などが考察する主題になります。受講者には適宜,文献読解や作品分析,授業時の議論への参加などを求めます。できるかぎり初回授業までにモア『ユートピア』を入手し,ひととおり読んでおくようにしてください。

教科書:トマス・モア『ユートピア』,中公文庫,1993年(762円+税,ISBN: 978-4-12- 201991-1)